今号の内容

 第3回コンピュータ外科学会は平成6年10月15日(土), 16日(日)の両日、東京慈恵会医科大学で開催した。今回は、第4回コンピュータ支援画像診断学会との合同学術発表会とした。

 特別講演2題、合同シンポジウム1題、コンピュータ外科学会側のシンポジウム2題を軸とし会を構成した。一般演題は当初50数題応募があったが、日程の関係で、〆切をすぎて応募のあった数題をお断りし、また、臨床応用報告に関する内容の演題をまとめ、シンポジウム形式で発表していただいた。

 鳥脇純一郎先生と橋本大定先生に司会をお願いした両学会合同シンポジウムの成果は充分に実りあるものであった。

 学会参加者は200名を越え活発な質疑をいただいた。

 また、今回は機器展示をはじめて試みた。展示は6社であったが、メーカーの方々の熱心な御協力と努力によって、充実した内容となった。しかし、プログラムの関係で展示を見て廻るに充分な時間がとれなく、残念であった。

 会場を1会場にしたため、充分な討議の時間がとれなかったが、参加者が、すべての演題を聴くことができるように配慮した結果、会場は全ての演題において賑わった。

 実行委員の先生方には、何度となく慈恵まで御足労いただき、学会の企画、運営に御協力いただいた。ここに謝辞を述べたい。


 第一回国際コンピュータ外科シンポジウムは94年10月17日に東京西新橋の東京慈恵会医大学高木会館で開催されました。

 演者は国外の研究機関からの6名を含む11名で,全員招待講演でした。講演時間は各演者30〜40分、質問時間は実質無制限といった具合で、じっくり話を聞いて、とことん質問ができる会合でした。参加者は50名余り、会場が手狭に感じる賑わいでした。

 

【トピックの傾向】

 講演は4つのセッションからなっており、それぞれ大まかに次のように分類できます。

1)日本でのCASの歴史と実績、

  将来構想

2)海外研究機関でのCASの現状

3)バーチャルリアリティ−、ロボティクスなど将来技術のCASでの展開

4)術中MRI、機能MRIなど

  CASの新しいトピック

 

 ここでは各講演については触れず、気が付いたことを私なりに述べます。

【硬組織対象の臨床応用への動き】

 臨床外科医の関心は既に物珍しさを越え臨床応用に移っています。

 しかし、私は研究開発レベルから臨床応用レベルに発展させるためのブレークスルー(あるいは馬力)がまだ不足しているように感じています。随分といろいろ揃って来たのですがまだ何かが...

 意地の悪い質問ですが、海外でそれぞれのCASシステムを主導する先生方に二つの質問をして見ました。

「複雑なプログラムを、誰が操作するのか」「CASシステム導入により社会保障費の削減は可能か」

前者は,複雑化するシステムが医師が直感的に操作できる範囲を越えてしまわないかという疑問、後者は高度化するシステムが果たして社会的にペイするかという疑問です。お答えは、

「現時点ではエンジニアが操作するが、将来は改善が必要だ」

「社会保障費を削減する事はないが社会的にペイする(はずだ)」

といった内容でした。現状ではこれらの点に関しては明確な答えが出ていないようです。

【軟組織への拡大】

 腹腔鏡手術の発展を契機に、低侵襲手術とこれを支えるCASに対する関心が確実に高まっているといえます。しかし、腹部臓器などに代表される軟組織に対するCASは脳神経外科、整形外科、形成外科の領域に比較して遅れています。原因は軟組織ゆえの困難に尽きるわけですが、これは古くから言われてきた事であり、この言い訳がそのままというのはエンジニアとして情けなく、奮起の材料にしたいと思います.

【世界の中の日本】

 第一回シンポジウムが東京で開催された事は偶然ではありません。今回のシンポジウムを通して、私の属する研究グループがこれまで進めてきた「コンピュータ外科」研究の方向性の正しさを再確認する事ができました。

 従来、欧米では診断技術とその発展としての手術支援が中心的に議論されて来た感がありますが、ここ1〜2年は外科医を中心にした流れへと変わりつつあります。これは私のグループが以前から取ってきた方向性であり、大袈裟に言うと「世界が近づいて来た」といったところです。

 逆にいうと,欧米では外科医が本気で参画したくなる環境が整ってきたということであり、これからが正念場と兜の緒を締める思いがしました。

【参加者について】

 シンポジウム終了後に会場近くのレストランを借り切り懇親会が開催されました。予定上は20分あった総合討議の時間がほとんどなくなってしまい、慌ただしく懇親会が始まったので、私は懇親会を討議時間にさせて頂きました。他の方もその様でしたし最後までほとんど全員付き合われたように記憶しています。

 ただ、惜しむらくはシンポジウム参加者に若手(レジデントなど)の医師が少なかった事です。特に、懇親会まで来た私と同年代の若者(< 30)は大半がエンジニア(の卵)だったような...

 月曜日に設定した事が災いしたでしょうか。ともあれ一緒に歩んでいく同年代の、これから外科の世界を担うような友がもっと欲しいと思いますし、作っていきたいと思います。

 最後に、実行委員の一人として自画自賛になりますが、これだけの内容の(しかも割安な!)講演会を日本国内で開催できたことは自負するに足るものと思います。シミュレーションを越えた、治療/手術を主眼に据えたコンピュータ外科の研究で我が国は世界に向けてメッセージを発するべき立場にあります。次回(95年)の国際シンポジウムでは発表を公募する予定ですので奮って応募してください.


先端技術開発研究会の設置

総務部会長 土肥 健純

 この度、総務部会の下に「先端技術開発研究会」の設置を企画しております。本会では企業・工学・医学それぞれの立場から様々な問題を持ちよって、医療に関する新しい技術を開発していくことを目的としております。正式には4月中旬に発足し、活動としては年3〜4回の会合を開き、具体的なテーマについて臨床応用を目指した開発のためのディスカッションを行っていく予定です。

 御興味をお持ちの方は世話人あてに御連絡ください。

世話人:
	土肥 健純  東京大学工学部
		〒113 東京都文京区本郷7-3-1 
		FAX : 03-3812-8849
委員予定:	
 伊関 洋  (東京女子医科大学)
 片田 和廣 (藤田保健衛生大学)
 川上 憲司 (東京慈恵会医科大学)
 鈴木 直樹 (東京慈恵会医科大学)
 辻  隆之 (国立循環器病センター)
 橋本 大定 (東京警察病院)
 渡辺 英寿 (東京警察病院)


コンピュータ外科 Information Server 開設のお知らせ

 この度日本コンピュータ外科学会では、東京大学工学部精密機械工学科土肥研究室の御協力の下に、インターネットでの情報提供を始めました。まだまだ情報不足ですが、皆様のご意見を下に今後充実させていきたいと考えております。以下のサーバーにアクセスしてください。

	http://www.iscas.pe.u-tokyo.ac.jp
	ftp://rieko.pe.u-tokyo.ac.jp

ご意見・ご質問は事務局またはe-mailにてcas@rieko.pe.u-tokyo.ac.jpまでどうぞ 


投稿,お便りの募集

 CAS Newsletter では,皆様からの投稿やお知らせを募集しています。研究紹介や関連学会参加報告などの奮ってご応募下さい。

 また,皆様からの企画等もありましたらお知らせ頂けると幸いです。

CAS Newsletter  No.4
 
編集:  日本コンピュータ外科学会 広報部会
 
学会事務局: 〒113 東京都文京区本郷 7-3-1	
       東京大学工学部精密工学科
       医用精密工学研究室
  日本コンピュータ外科学会担当 鈴木 真
  e-mail:jscas@miki.pe.u-tokyo.ac.jp
  Tel: 03-3812-2111 内線 7480 
  Fax: 03-3812-8849