東京大学医学部整形外科 中島 勧

 今年の1月22日から28日までアメリカのサンノゼにあるSan Jose Convention Centerで開催されたPhotonics West 2000という学会へ参加致しましたので,学会の概要と感想及び私自身の発表についてご報告させていただきます.学会へは共同演者である東京大学大学院新領域創生科学研究科土肥教授,佐久間助教授と共に参加いたしました.

 この学会は世界最大の光工学の学会であるThe International Society for Optical Engineering (通称SPIE)が主催するもので,画像関連のElec-tronic Imaging,医学生物学関連のBiOS,レーザー関連のLASE,電子光学機器関連のOptoelec-tronicsの4つの学会が集合してできています.これら4つの学会の中にはさらに細分化された学会があり,4つで合計87の学会が1週間の会期に開催されることになりますが,そのほかにも世界中から約2000の光学機器メーカーによる展示が開催されます.学会と展示を合わせた全体での参加者は年々増加しており,今年は12,200人にも上りました.我々はこのうちのBiOSに簡単に目を通した後に,Electronic Imagingに参加いたしました.

 BiOSはInternational Biomedical Optics Symposiumの略称で,レーザーや光学機器の医療,特に診断や手術支援への応用が中心になっていました.これはさらにClinical Applications,Clinical Instrumentation,Tissue Science and Engineering,Optical Diagnostic Technologies,Functional Imaging and Biomolecular Analysisの5分野に分けられ,さらにその中で細分化されて合計29の学会で構成されていました.その中で興味深かったのはClinical Applicationsでした.これは形成外科,泌尿器科,耳鼻科,胃腸手術等といった診療科や手術内容別に12の学会に分けられており,内容的にはコンピュータ外科と呼ばれている分野から機械工学を除いたようなものでした.発表者は医師が中心で臨床のデータも多く用いられており,コンピュータ外科に興味がある方,特に医師にとっては参加しやすいと思われました.

 Electronic ImagingはBiOSと異なり工学系の学会であり,画像表示や画像処理法,文字認識,マルチメディアなどに分けられ,合計26の学会から構成されていました.今回の学会参加の目的はそれらのうちのStereoscopic Displays and Applications XIで発表することであったため,以後はこの学会についての報告とさせていただきます.この学会が扱う分野はホログラフィーを除いた三次元ディスプレイ(主に両眼立体視ディスプレイ)の応用に関するもので,Human Factor,Medical Applications,Autostereoscopic Displays等のセッションに分けられており,合計37演題の発表が行われました.興味深かった演題としては,両眼立体視が近視の原因になる可能性があるとする「Eye damage caused by stereoscopic display」,integral photographyによる三次元画像表示の際にapertureとして液晶ディスプレイを用いることで表示可能領域を広げようとする「Three-dimensional display using intersection of light beams」等がありました.

 我々の発表の表題は「Three-dimensional dis-play system for medical imaging by computer generated integral photography」であり,当然Medical Applicationsのセッションに含まれていました.このシステムについては昨年開催された第8回日本コンピュータ外科学会でも発表いたしましたが,integral photographyの原理で液晶ディスプレイを用いて三次元画像を表示し,表示される画像をコンピュータ上の計算で高速作成するというものです.特徴は簡易な装置のみで特殊な眼鏡や視点追跡なしで運動視差を含んだ同時に多人数が観察できる三次元画像を表示できるということです.発表の後に学会場で,以前に我々に本学会への参加を勧めて下さったProgram Committeeの長田昌次郎先生にお会いしたのでCT画像から作成した回転する頭蓋骨の三次元画像をノートパソコンとレンズアレイを用いて表示して見せたところ,最終日に行われるDemonstrationへの参加を勧められ,そうさせていただくことになりました.

 実は仕事の関係で私は最終日には参加できなかったため,Demonstrationは佐久間助教授にお願いしたのですが,参加者にはおおむね好評だったとのことであり,その後年2回発行されるElectronic ImagingのNewsletter*1にもレポートされることになりました.

 参加後の感想としては,コンピュータ外科に類する言葉が全く含まれていない「Optical Engi-neering」の学会でコンピュータ画像を用いた医療(診断・手術)支援を中心テーマにした演題が数多くあったことに驚きました.また日本国内では三次元ディスプレイの専門家から強い拒否反応を示された我々の研究が,海外の専門家にはすんなり受け入れられたことにも驚かされました.そして何よりも,光工学などという全く知らない世界の学会へ大きな不安を抱えて参加した私を暖かく歓迎して下さったConference Chairの方々や学会への参加を勧めて下さったProgram Committeeの長田昌次郎先生には大いに感謝いたします.

 *1 http://www.sunnybains.com/ei.pdfでサンプルを読むことができます.

学会会場入り口

 

会場内の展示

 

ポスター展示