第4回国際コンピュータ外科学会大会(ISCAS)参加報告

東京大学大学院新領域創成科学研究科

佐久間一郎

 

 第4回国際コンピュータ外科学会大会(4th Annual Conference of the International Society for Computer Aides Surgery)は2000年6月28日から7月1日までアメリカ合衆国サンフランシスコ市のHyatt Regency San Franciscoにて14th Computer Assisted Radiology and Surgery(CARS), 2nd International Workshop on Computer-Aided Diagnosis, 6th Computed Maxillofacial Imaging Congressと同時開催の形で開催された.

 大会の初日6月28日は会場をStanford大学に移しCARS@STANFORDという形で教育講演的な催しが行われた.放射線分野では機能的MRI,ボリュームデータの表示,実時間心臓MRI,血管レセプターのmolecular Imaging, 画像診断によるスクリーニングなどが扱われた.また外科分野では,筋肉−骨格系を対象として外科シミュレーション,心臓血管外科におけるシミュレーションの治療計画立案への応用,外科手術シミュレーションにおけるVisualization,Volumetric Imageに基づく外科手術ナビゲーション,外科手術用robotが扱われた.またLuncheonセミナーとして大学での研究成果を企業化するといったトピックスで特にInternet関連技術の企業化についてディスカッションが行われた.

 スタンフォード大学は従来CAS分野での活動はそれほど行われていなかった印象があったが,全米各地より有力な研究者を集め急速にCAS分野での研究開発を立ち上げている印象を受けた.Stanford大学のこの分野の研究グループによる一種のデモンストレーションであると感じられた.

 6月29日からは会場をHyatt Regency San Franciscoに移し,論文発表,パネルディスカッション,ワークショップなどが行われた.外科手術シミュレーション,仮想化内視鏡,外科手術ロボットならびにInterventional MRIについてのセッションや,頭部,頸部、脊椎,脳神経外科,整形外科といった応用分野別のセッションが用意されていた.特に手術ナビゲーションの報告が多く見受けられ,また参加者も多かった.複数のmodalityの画像を統合して手術ナビゲーションに応用した臨床例の報告や,新しいシステムの報告があった.また軟部組織の有限要素法によるモデリングや動く心臓のモデリングなどの変形を伴う臓器のモデリング技術に関する報告も見られた.手術ロボットに関しては経皮的脊髄治療用のロボット,鉗子マニピュレータ,手術ロボット用ヒューマンインターフェース,低侵襲手術用微細マニピュレータなどの開発等についての発表があった.一方手術用ロボットの臨床経験については整形外科分野のものが主であった.パネルディスカッションでは,CASの研究は当初の興味を持つ研究者を中心に研究が行われていた段階から,より多くの外科医を対象とした実際的な臨床研究が行われる段階に移ってきているといった指摘がなされた.このことが本学会への参加者が増加しているひとつの要因ではないかと思われた.また機器展示においても放射線関連機器のほかにナビゲーションシステムなども多く展示されていた.

また会期中に開催されたISCASの総会にて東京女子医科大学の高倉公朋先生が,学会長に選出された.

 来年の本学会は2001年7月27日から30日までドイツ,ベルリンで開催される予定である.日本コンピュータ外科学会会員の方々の積極的な参加を期待する次第である.

 

CARS@STANFORDに参加された日本からの先生方

 

機器展示の風景