九州大学大学院 消化器・総合外科(第二外科)

島田 光生  

 WORLD CONGRESS OF HIGH-TECH MEDICINEは,2000年10月16日から10月20日までドイツ,Hanover市のHanover Congress Centerにて開催された.Hanover市は,18世紀にはイギリス国王も兼ねたHanover王家ゆかりの町で,優雅な王宮庭園が往事をしのばせてくれる.ニーダーザクセン州の州都で,見本市(メッセ)の町として世界中から人々が集まる国際都市でもあるが,ヘレンハウゼン王宮庭園やマッシュ公園など緑が豊かで“緑の中の大都市”と呼ばれている非常に美しい街である.また,本世界大会は2000年6月1日〜10月31日の間,ドイツで初の万博である“Hanover万博EXPO2000”にリンクされて開催された.小生は,1988年に肝移植の見学で,Hanover大学のProf. Pichlmayerを訪れたことがあったが,その時に比べ,Hanoverの町は,明るく華やいでいた.

 HIGH-TECH MEDICINEという学会名どおり,基礎医学から臨床分野にいたるまで多岐に渡る,ハイテク医学関係の各種シンポジウムや口演,ポスター発表が行われた.今回は,ハイテクとの名前にちなんで,特にLive Demonstration (Tele-medicine, Tele-mentoring, Tele-surgery)に力を入れ,Beethoven Hallでは10月18日は一日中,Live Demonstrationが行われていた.他には,画像診断や外科手術・臨床教育におけるコンピューターシュミレーションや新規手術室システム,外科手術ロボットなどコンピューターサイエンスと外科領域の融合から,新規癌抗原を用いた臨床検査の成績,人工肝臓や人工血管,人工皮膚などの再生医学領域の研究現状などの基礎医学分野の発表,更には上腹部・下腹部また膵・胆管,気管支における仮想化内視鏡,Interventional MRIに関するセッションや,医療情報処理における病院のコンピューターシステムの工夫やインターネットの有効利用法,医療経済と先端医療の問題とその未来,腹腔鏡下手術や胸腔鏡下の新規手術器具,などのセッションが設けられていた.プログラム全体から見ると,外科臨床系の内視鏡下手術の発表が多く,低侵襲手術をテーマとした腹腔鏡下または胸腔鏡下手術の各施設の手術法の工夫や短期・長期の手術結果などの発表,さらには,ダビンチなどの内視鏡下手術支援ロボッを用いた次世代の手術に関する発表がなされた.この分野は,肺,胃,大腸,肝,胆,膵,脾それぞれの臓器別にセッションが用意されており,注目度も高く,参加者も多く熱心な討論が続いた.ハイテク医学世界大会の名前のごとく,招待講演者としては,世界中から,その道の一流の専門家が一堂に会する学会となった.機器展示は,新規器具を含む内視鏡手術関連の展示が目を引いたが,継続性のある学会ではないので,全体的にハイテクからは幾分離れた機器展示であった

 小生の発表は,メイン会場のシンポジウム「Development of High-Technology for the Manegement of Digestive Disease」で,次世代の肝胆道外科というタイトルで,3次元画像による術前手術計画・術中ナビゲーション,ダビンチを用いたロボット手術,および遠隔手術の可能性を紹介した.同じセッションで,東京慈恵会医科大学の鈴木直樹先生も発表されており,同じセッションで発表させていただく光栄に浴した.本学会に参加して,腹腔鏡や胸腔鏡下手術は多くの領域で,既に国際標準となっており,コンピュータ外科学会の取り扱う題材が,次世代のハイテク医学(特に外科系臨床)に深く関係していることを痛感すると共に,コンピュータ外科学会を通して,日本から,一早く,世界に向けて,先端テクノロジーを発信する必要性を強く自覚した学会であった.

 

学会に参加された日本からの先生方