No.001 ヘリカルスキャンCT(HES-CT)による小脳橋角部腫瘍の術前シミュレ−ション 片田和廣1,小倉祐子2,竹下 元2,藤沢和久3,安倍雅人3, 神野哲夫3,古賀佑彦2 藤田保健衛生大学 衛生学部1,藤田保健衛生大学 医学部 放射線科2, 同 脳神経外科3 愛知県豊明市沓掛町田楽ヶ窪1-98 電話番号 0562-93-9259,FAX番号 0562-93-9259

【目的】
 近年開発されたヘリカルスキャンCT(HES-CT)は,その連続スキャン機能により生体の高速計測を可能とした.これにより従来医用三次元画像における最大の問題点であった患者における高分解能ボリュームデータの取得が大幅に容易となり,三次元画像の真の実用化を実現しつつある.今回われわれは,HES-CTを小脳橋角部腫瘍例の手術シミュレ−ションに応用し,その有用性と問題点について検討したので報告する
【方法及び対象】
 東芝TCT-900S を使用し,140kvp,100mA,スライス厚2mm,テーブル移動速度 1.5 ないし 2mm/秒の条件で,造影剤90mlの同期注入下に30秒の連続スキャンを施行した.得られた連続的デ−タから体軸方向のピッチが1mmとなるように補間再構成処理により45から60枚の軸位断像を作製した.この軸位断像から,TCT-900S付属のプログラムにより,ボクセル法による三次元表面再構成画像(3D像)および多断面変換像(MPR像)を作製した.3D像において,リアルタイム骨切削プログラムにより患側後頭下開頭術のシミュレーションを行った.さらに3D像上に設置されたROI内にMPR像を合成するシンセサイズドオブリ−ク表示プログラムを用いて,同様に後頭下開頭術のシミュレーションを試みた.対象は聴神経鞘腫8例,髄膜腫4例を含む15例である
【結果及び考察】
 ボクセル法3D像では,ROIの部位,形状,大きさを随時変化させることにより,アプローチの方向,硬膜静脈洞と開頭部位の関係,術野における腫瘍位置・形状などをリアルタイムで評価し得た.これにより開頭部位の適否判定が可能であった.シンセサイズドオブリーク法では,アプローチ経路に沿って深度に応じた組織が表示され,小脳・脳幹・脳槽などの軟部組織を含めた評価が可能であった.また,しきい値処理が困難な造影効果の比較的乏しい腫瘍においてもシュミレーション可能である点は,3D法では得られない利点であった.両法に共通して,リアルタイム表示により画像上での試行錯誤が可能な点は,最適開頭部位を求める上で重要と思われた.問題点としては,実際の手術操作において用いられる軟部組織の圧排がシミュレーションできないことが挙げられる.今後組織の弾性を含めたシミュレーション手法の開発が望まれる