No.010 画像誘導定位脳手術における術中脳変形シミュレーション 片岡弘之、野崎ひろみ、渡辺英寿1)、奥寺敬2)、土肥健純、堀内孝3) 、太田裕治、鈴木真、山内康司、増谷佳孝、都築正和4) 東京大学工学部精密機械工学科、1)東京警察病院脳神経外科、 2)信州大学医学部脳神経外科、3)東亜大学大学院応用生命科学科、 4)東京大学 〒113 東京都文京区本郷7−3−1 電話 03-3812-2111 内線7483   FAX  03-3812-8849


【背景】
近年、医用画像を用いた様々な手術支援方法が開発検討されている。そこでは、術前にX線CTやMRI等から得られた画像を用いることが多い。しかし、術中は軟組織が移動・変形するため、病変部位が術前に計測した位置からずれることが問題となってきた。そこで、術中における組織あるいは病変部位の正確な位置や形状を把握するために、術前と比較して術中に組織がどれだけ変形するかを数学的に解析する必要がある。まずは、開頭手術における脳の変形をシミュレーションしたので、報告する。
【目的】
開頭手術の術中における脳の変形を数学的に解析し、術前の頭部断層像と術中の脳表面位置から術中の変形した脳内部の様子を推測する。
【方法】
まず、脳のaxial断面を模擬したファントムを作成し、変形する前後の形状を得る。一方、計算機上に変形前のファントムの形状モデルを作成し、有限要素法による力学解析で変形後のファントム形状を推測する。そして、計算結果のファントム形状と実際の変形後のファントム形状を比較し、それらが一致するような計算条件を求める。次に、その計算条件に基づいて、術前の頭部X線CTやMRI画像と開頭後にニューロナビゲータを用いて測定した脳表面の位置から術中の脳内部の様子を推測し、術中X線CTによる画像と比較を行う。今回は簡単のため、各axial断面における2次元での重力による変形のみを考慮する。また、計算はSunワークステーション上で行う。
【結語】
術前の断面形状と術中の表面位置から予測された脳内部の様子と、術中X線CTによる脳内部の様子には、定量的な一致が見られた。より精度の良い変形解析を行うためには、より複雑な形状設定を行う必要があると考えられる。3次元的な応力も考慮することが望ましい。