No.019 超高速MRIによる脳局所神経活動の計測 Measurement of local brain activity with high performance MRI scan. 渡辺英寿1、酒井邦嘉2、山本悦冶3、小野寺山香里3、板垣博幸3、 小泉英明3、宮下保司2、真柳佳昭1 東京警察病院脳神経外科1、東京大学医学部 第一生理2、(株)日立製作所中央研究所3 E Watanabe, K Sakai, E Sakai, H Koizumi, Y Mityashita, Y Mayanagi. Department of Neurosurgery, Tokyo Police Hospital, Department of Physiology, University of Tokyo, Hitachi Coorpotation 〒102 東京都千代田区富士見2−10−41 東京警察病院脳神経外科 渡辺英寿 電話: 3263−1371 内線 2541 FAX:3263−1291


【はじめに】
Echo Planar Imaging (EPI)を用いた超高速MRIは、強力な傾斜磁場を高速に反転しながら印加し、70ms程度の短時間に一枚の画像を取得することが出来る。この方法は、局所的な磁場不均一の影響を強く受けるため、生体組織内における磁気感受率の微細な変化を捉えることが可能である。血中ヘモグロビンの磁気感受性は酸素飽和度により大きく変わるため、局所の神経活動によってひき起こされたヘモグロビンの酸素飽和度の変化を捉えることにより、脳局所の神経活動を捉えることが可能である。我々は日立製作所に完成したEPI試作機を使用して大脳感覚野の描出に成功した。
【方法】
装置は1.5TMRIで空間分解能は2mmX4mm、画素数は128*64で、256X256に補間表示した。測定周期は2秒で、2スライスを撮影した。また、そのままの姿勢でスピンエコー像を撮影し、解剖学的な指標とした。
【結果】
一側の指に振動子で125Hzの振動刺激を与えると、対側第1次感覚野の活性化が直径約4mmの範囲にピークを持って観察された。また、その変化は約6秒と、極めて短時間にプラトーに達し、タスク終了後は同様にすばやく沈静化することが認められた。スピンエコーで得られた脳表側面像(SAS)に直接重ねることで活性化部位の脳回への投射が容易に行われた。
【結語】
本方法はPETを用いる局所血流測定法に類似しているが、以下の点で大きな利点がある。1)アイソトープや化学物質の注入あるいは放射線を必要としないので無侵襲である。2)そのためくり返し測定に制限が少ない。3)秒間数回程度のくり返し撮影が可能で、PETの15分間隔に比し1000倍以上の時間分解能がある。4)おなじセッティングでスピンエコーによる通常の解剖学的MRI像を得ることが出来るため解剖像との複合が極めて正確になる。以上のような様々な利点を応用すると、術前における患者の機能マッピング、さらにそれを応用した術中ナビゲーションがより安全な手術を可能とすることが期待される。