N0.020
  超音波カラードップラーによる下肢動脈の流速パターンの解析
◯鈴木 肇*、山川仁憲*、水間健二*、滝沢代輔*、宮本幸夫*、
川上憲司*、島田孝夫**
東京慈恵会医科大学、放射線科* 同第三内科**
〒105 東京都港区西新橋3-19-18
東京慈恵会医科大学附属病院 放射線科  鈴木 肇
Tel03-3433-1111 内腺3365、6   Fax   03-3435-1922

【目的】
超音波カラードップラー装置を用いて下肢動脈の流速パターンを解析し、抹梢血管抵抗および、血管弾性の判定を試みた。
【方法】
使用装置はアメリカATL社製Ultra Mark9を用いた。対象は正常例5名、10年以上の罹病期間を有する糖尿病患者7名とした。正常例に対しては、室温、15℃5分間の冷水負荷、および42℃15分間の温水負荷を大腿動脈と前後脛骨動脈の反応性をみる目的で下腿1/2に対して行った。糖尿病例では、安静時、および末梢血管拡張剤(プロスタグランディンE1、Lipo PGE1)を投与し1時間後に同様の測定を行った。また測定部位は左右の大腿動脈、および前後脛骨動脈とした。
【結果】
下腿動脈の流速パターンは、スパイク波形成相(第1相)と流速安定相(第3相)およびその移行相(第2相)に分類できた。第1相の最高値をA、第2相の最低値をB、第3相の平均値をCとして、B/Aより移行相指数(TI)を、(A-C)/Aより循環抵抗指数(RI)を算出した。正常例では、冷水負荷により全例第2相でreverse flowを認め、従ってTIは著明に低下した。糖尿病例では正常例よりTIは低値でありRIは高値であった。糖尿病例LipoPGE1負荷によりTIは変化のないものから著明に改善するものまで存在した。RIにおいても同様な反応がみられた。
【考察】
下腿動脈の流速パターンは、頚動脈のそれとは異なるパターンを認めた。3相に分類し解析した結果、冷水負荷により下腿の循環抵抗を増大させると第2相にreverse flowを認め、第3相の平均値は低下した。これより算出したTI、RIは末梢循環抵抗の変化に鋭敏に反応する指標と考えられた。また糖尿病例の薬物評価にも有用であった。