No.022 超高速モータを用いた外科用穿孔システムに関する研究(第2報) 自己回帰モデルを使用した貫通認識方法の検討 佐久間一郎、田所博幸、福井康裕 東京電機大学理工学部応用電子工学科 〒350-03,埼玉県比企郡鳩山町石坂 TEL,0492-96-2911,FAx0492-96-6413


脳外科・整形外科の領域において頻繁に行われる骨加工を伴う手術の支援を行うことを目的に、特に、脳外科手術における血腫吸引のための頭蓋骨穿孔に焦点をあて、超高速ブラシレスDCモータにより回転されるドリルによる骨の貫通の認識を確実に行い、ドリルの送りを停止し、軟部組織に対する損傷をできる限り小さくするためのモータ制御方法、血腫吸引に適した中空のドリル刃の試作等を行ってきた。前報では使用したブラシレスDCモータ電流波形振幅の負荷変動に対する変化を捉えることによる貫通認識方法を検討したが、回転条件・切削条件が変化すると、認識条件を設定し直さなければならないなどの問題点があった。そこで、今回は、より汎用的な貫通認識方法を開発する第一歩として、電流波形を自己回帰モデルによりモデル化し、切削状態を認識する方法について検討した。

前報で報告した実験装置により木板を穿孔している際の電流波形を計算機により一定周期でサンプリングし、自己回帰モデルで表現した。これを使用して、次の時刻での電流値を予測した。切削状態が定常的であれば、自己回帰モデルの係数は一定のパターンを示し、貫通前後など、切削状態が変化した際には、自己回帰モデルが変化するのではないかと考え、オフラインでの解析を行った。パターンの変化の検討は予測誤差の検討・線形予測係数の主成分分析により行った。切削条件としては送り速度・ドリル回転数を変化させた。

貫通時付近で、予測誤差が大きくなる傾向が観察されたが、これのみを使用して貫通認識を行うことは困難であった。一方、過去5点の測定値より得られる自己回帰モデルの線形予測係数を主成分分析したところ、切削開始および貫通時での主成分の分布パターンと切削中でのものの間に相違が観察された。今後この方法を使用して確実に貫通認識が可能であるか、アルゴリズムの検討を更に進める予定である。