No.029 内視鏡下における3次元視 橋本大定、星野高伸、長谷川俊二、梶原周二、斉藤慶一 東京警察病院外科 102 東京都千代田区富士見2-10-41 Tel. 03-3263-1371 Fax. 03-5276-6899


従来の内視鏡下手術における画像は、二次元的表示であるため、画面の奥行きの判断は、術者の持つ解剖学的知識と経験、鉗子による触診により行われてきた。それ故、比較的簡単な手術作業は二次元腹腔鏡の観察下でも遂行可能であったが、より複雑な手術作業となると、その遂行が困難で、かつ長時間を要し、手術の安全性や確実性の点で問題があった。

我々の開発した三次元内視鏡は、二つの平行な光路系に先端プリズムで一定の視差角を持たせたもので、光学シャッターとしては、液晶板をCRT画面上に組み合わせた受動式シャッターを採用しており、以下の特徴を有している。(1)メガネは、偏光板のみとなり、計量で明るく、かつ、コードレスとなり、多人数での観察も可能である。(2)時分割時間は1/120秒としたため、画面のチラツキが殆どない。(3)視差角を約4度としたため、焦点深度が広がり、スコープの前方約2cmから16cmあたりまで、良好な3次元視が得られる。(4)光学視管の口径差が基部と先端とで無くなり、径12mmの外套管に挿入できる。

三次元内視鏡の利点は、まず、従来の二次元内視鏡と異なり、確実な深部感覚(depth perception)が得られることにある。

たとえば、従来、腹腔内で腸吻合を行うことは、二次元内視鏡では極めて困難か、殆ど不可能なことであった。三次元内視鏡を用いると、鉗子で把持する針の先端がどちらを向いているかを明確に判断でき、かつ、腸切断端を把持する作業も、確実、容易に行えるため、腸壁の針通しの作業をスムースに行うことが出来た。

三次元内視鏡は。手術作業が複雑であればあるほど、その有用性が高く、安全に手術を遂行するためには必須のものである。