No.030 脳神経外科領域における術野画像再構成の有用性と問題点 中島 伸、加藤天美、吉峰俊樹、金山拓司、早川 徹 大阪大学脳神経外科 〒565吹田市山田丘 2−2 tel 06-875-7343,7344, fax 06-875-7225


【目的】
重要な機能を持つ領域がお互いに複雑な神経連絡をなして構成された脳の手術には正確な解剖の知識と周到な手術計画が必要である。そのため私達は術前種々の画像処理法を応用して予定術野の再構成画像を作成し、手術計画ならびに手術における有用性と問題点を検討した。
【方法・結果】
(1)脳表解剖画像:予定術野と平行に撮像した MR 画像を深部の断面より順次積み重ねることにより、脳表解剖画像を作成した。この画像は手術脳の術野と比較すると脳表構造が極めて忠実に再現されていた。しかし、あらかじめ設定した視線角度を画像再構成時に変更するのは不可能であるため、MRI 撮像時の角度は慎重に決定する必要があった。 (2)ボクセルモデルによる三次元再構成: 連続 thin slice CT より三次元モデルを再構成した。このような画像は任意の方向からの観察は自由自在であり、またモデルに切断面をいれることにより、内部の構造物を露出することも可能であった。このため模擬手術を行いながら病変部の立体的位置関係を把握し、最適な手術アプローチを選択できる。しかし、組織ごとのセグメンテーションが完全ではないので、頭蓋骨に関しては明瞭な画像を得ることができたが、腫瘍や血管などの描出は困難であった。また、ボクセルモデルでは各構造の透過度の設定が難しく、内部構造の明瞭な表現は容易ではなかった。
【結論】
積み重ね法による脳表解剖画像は手技も容易で精密な再構成画像が得られ、手術に特に有用であった。しかし、それぞれの画像再構成法には長所、短所があり、各症例を十分検討し、最適な方法を適用すべきと考える。