X線CT像ならびにMRI像による骨盤内臓器3次元表示の試み 上野 滋*、横山清七*、添田仁一*、田島知郎*、三富利夫*、周藤安造**、石田治雄***、林  奐*** *東海大学医学部外科、**同 開発工学部 ***東京都立清瀬小児病院外科 〒259-11 神奈川県伊勢原市望星台 電話番号 0463(93)1121 EXT.2280 FAX番号  0463(93)1153

発表要約

骨盤内臓器の病変に対する手術に際しては、病変部の同定とともに術後の排尿排便機能を考慮することが重要である。従来行われてきた骨盤部病変に対する造影・内視鏡・超音波検査による評価では病変の3次元的把握が困難であり、機能温存を目指す手術に対し情報が不十分である。我々は、以上の観点から骨盤部病変の3次元表示像を得る目的で、X線CT及びMRIによる骨盤部水平断層像を元に3次元的画像を合成した。 対象は根治手術前の小児直腸肛門奇形症例、直腸肛門部に病変を有する症例である。X線CT像はスライス幅2ー5mmスライス間隔2ー5mmの画像を用い、(A)各画像の拡大投影図における骨・腸管・膀胱・筋肉・皮膚などの形態を用手的にスケッチし、その輪郭をデジダイザを用いて入力、サーフェースモデル法によりPCで3次元表示したものと、(B)各臓器周囲を関心領域とし、ボクセル空間におけるCT値を域値処理することにより各臓器の輪郭を抽出、GWSで3次元表示したものを比較した。MRI像はスライス幅3ー5mmギャップ0ー1mmのT1強調像をもとに信号強度により上記(B)法にしたがって、各臓器の輪郭を抽出、GWSで3次元表示した。

X線CT像をもとにした3次元表示では、域値処理による(B)法をもとにした臓器抽出の結果による像は、スケッチ像を元にした(A)法による表示像と差異は少なく、骨盤内臓器の自動抽出の可能性が示唆された。

MRI像をもとにした3次元表示像はCT像のそれに比較して腸管・筋・膀胱などの軟部組織の表示に優れていることが示唆された。 以上の結果を踏まえ、今後は臨床的に利用価値の高い骨盤部3次元像の表示を目標にすることが必要と考えられた。