学会概要

一般社団法人 日本コンピュータ外科学会の学会概要はこちらをご覧ください。

理事長挨拶

 この度、日本コンピュータ外科学会理事長を拝命し、大変光栄に存じております。浅学菲才の身ながら大役を仰せつかったのは、学会発足前後からのご縁ゆえかとも存じます。これまでご指導、ご支援賜りました皆さま方に深く感謝申し上げます。

 日本コンピュータ外科学会は1992年の発足時から、ロボティクス・画像・ナビゲーション・内視鏡などの手術支援技術の研究開発を年次大会や学会誌で取り上げるとともに、学会としての提言も行なってきました。1990年に本邦で開始された内視鏡外科手術の急速な普及もあって、学会発足直後から手術支援ロボットや画像支援技術の進歩と商品化のために、本学会会員を中心とした医工連携、産学官連携も精力的に拡大しました。

その結果、2000年当初には欧米以上の先進的な国産手術支援ロボットのプロトタイプが開発され、腹腔鏡操作ロボットの商品化にも成功しました。また90年代に本学会で先駆けて発表された仮想内視鏡やCT画像三次元立体構成の研究は、今日では第一線の医療機関でも日常的に活用されるまでに至りました。

 しかし手術支援ロボットについては米国一社の製品がしばらく世界市場を席巻しました。我が国では1960年代から医工連携下に人工心臓や心臓ペースメーカなどの優れた研究とプロトタイプ開発に成功しながらも、世界市場で活躍できた治療機器が少ないことも事実です。

 これに対し本学会では、医工連携・産学連携活動に加え、Regulatory Scienceや世界市場をにらんだ先端医療機器上市化のための方策についても、研究発表と社会発信を行なってまいりました。

コロナ禍を機に、医薬品・医療機器の国内開発が国民のために必須であることが改めて注目されるなかで、待望の国産手術支援ロボットが上市化されたことも、30年におよぶ本学会会員の皆さまの様々な研究と努力も背景にあるかと拝察します。

さらに手術支援VR・ARからXRに至る研究開発と製品化、AIやOntologyの内視鏡外科手術や画像診断への応用等も、本学会を軸にした幅広い研究体制下に取り組まれています。

 新たな学際領域も創設後、数十年を経ると成熟した領域となることは、リハビリテーション医学・集中治療医学・心療内科学など第二次大戦以降に新領域として登場した臨床領域でも示されております。

現在は内視鏡外科手術黎明期であった本学会発足時に誕生した方々が、すでに外科専門医資格やPhDを取得する時代となりました。外科手術とInterventional Radiologyの融合、再生医療、遺伝子治療、Precision Medicine等の進歩も鑑みますと、既存の外科手術をトレースするだけのコンピュータ外科学ではならないことも事実です。AI、IoT、5G、DXなどの用語が一般社会で普及して久しい今日、新世代のコンピュータ外科学への発展に連ねることが、本学会の使命かと存じます。今後とも皆さま方からのますますのご指導ご支援を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。

篠原一彦 東京工科大学医療保健学部

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