日本コンピュータ外科学会の
「精密手術用機器技術ガイドライン」作業経緯
精密手術用機器技術ガイドラインWG 座長 橋爪 誠(九州大学大学院医学系研究科)
当学会は1992 年の発足以来,世界に先駆けてコンピュータ外科(Computer Aided Surgery)の用語とコンセプトを提唱し,手術ナビゲーション,手術ロボティクスなどの研究開発の展開を主導してきました.会員総数は800 人強(平成18 年9 月現在)と小規模ながら,本邦でこの分野の研究開発と臨床応用に携わる指導的な医学者と工学者,意欲ある企業のほぼ全員が参加する,分野横断的な学会となっております.
コンピュータ外科分野では,わが国は研究で世界をリードする反面,その臨床実績と製品化の面で諸外国に比べて遅れていました.行政にあっては治験促進,国内医療機器産業の劣勢と医療費高騰などの問題意識から,厚生労働省が平成15 年3 月に医療機器産業ビジョンを発表して経済産業省と局長レベルの合意の下に国内の医療機器産業と研究開発の促進策が進められることになりました.その一環として革新的な医療機器の審査ポイントや収益予測の拠り所(評価指標)など,事業化にあたって予測が困難な点に関する評価指標を学界主導で定めて,研究開発者,行政,医療関係者で共有することでスムーズな事業化をサポートする目的で,医療機器ガイドラインが策定されることとなりました.
平成15 年度からNEDO で医療機器ガイドラインの調査研究が開始され,コンピュータ外科分野もその題材のひとつとされました.平成15 年6 月に当学会内にガイドラインワーキンググループが発足しました.当初は医学者,工学者合わせて9 名ほどの小さなグループとしてネットミーティングによる活動を開始し,平成16 年4 月に合宿形式の集中ミーティングを開催した際に,ほぼ現在の規模のメンバー(関係者約30 名)になりました.以後年に1 回のペースで集中的なディスカッションを行い,そのほかにネットミーティングなどで作業しています.
平成17 年度から厚生労働,経済産業両省による医療機器ガイドライン事業が開始され,同年12 月から「ナビゲーション医療」という名でこの分野のガイドライン策定する作業が開始されました.本学会では今後,積極的に行政の取り組みとの整合を図ってまいります.
この分野ではISO/IEC,FDA など海外でも規格化やガイダンス化が始まっていません.当学会はComputer Aided Surgery のコンセプトを世界に提案した学会として,また研究開発,製品実現(薬事法承認申請),臨床運用のフェーズを横断的にカバーできる,指導的な医学者・工学者・企業が一堂に会する学会として,関連学界の意見を集約したガイドラインの提言を目指して作業を進めてまいる所存です.本ワークショップでは作業案をオープンに議論することで,より広範に支持され,役に立つガイドラインの提言を目指す最初の試みと位置づけております.
今後も忌憚ないご議論とご指導を賜りますよう,お願い申し上げます.
2007年1月26日開催 「ナビゲーション医療分野」医療機器ガイドラインに関する学会合同検討ワークショップ より
参考
|